藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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11月の花「カトレア」
透明感のある薄紫色のカトレア‘アメシステラ’とごく淡いピンクのダイヤモンドリリーとの組み合わせで気品のあるブーケに。著名なアーティストさんに、活動50周年と文化功労者選出のお祝いに広島のテレビ局からの贈り花です。ライペロージア、タラスピオファリム、ビターチョコゼラニウムをあしらってナチュラルでさわやかな雰囲気に仕上げました。
ランの女王と称賛したくなる美しさと存在感
切り花で利用されるランの中でも、花サイズと豪華さで群を抜くのがカトレアとファレノプシスです。
8月4日配信の記事ではファレノプシス=胡蝶蘭を紹介しました。そのときに、大輪花のファレノプシスは王様、女王はカトレア、そしてプリンセスがミディファレノプシス、と私が抱いているイメージをお伝えしましたが、今回はその女王の登場です。ちなみに学名のCattleyaそのままの読みで、カトレヤと呼ばれることもあります。
ファレノプシスに比べると花形に立体感があるのがカトレアです。花サイズがあるので、大きなアレンジやブーケのほうがバランスを取りやすく、何か特別な日やアニバーサリーの贈り花に利用するとゴージャス感を演出できます。
濃淡ピンクや黄色、オレンジ色、紫などの花色がありますが、やはりカトレアといえば白の印象が強いと思います。そういえば、イギリスのエリザベス2世のウエディングブーケにも清楚な白いカトレアが使われていましたね。切り花のカトレアは一年を通して出回りますが、もともとは冷涼な気候を好むため、私は秋から冬にかけてのカトレアがいちばん美しいと感じています。
高級感のあるカトレアは以前から贈り花の定番なので、新鮮味に欠けると感じる方もいらっしゃると思います。ところが、私は2年くらい前からカトレアにはまってしまい、さまざまなシーンの贈り花によく利用しています。
そのきっかけは「蘭佳舎」さんのカトレアとの出会いでした。
「蘭佳舎」さんのカトレアの中でも最近とくに気に入って使っているのが、スリムな花弁ですっきりした花形の‘アメシステラ’。これだけ透明感のある花色はなかなかありません。カトレアは茎が短いものが多いのですが、‘アメシステラ’は茎が長めなのでブーケにも利用できます。出荷量が少ないので、見つけたら必ずオーダーしています。
千葉県と埼玉県のラン生産農家さん3軒で運営しているのが「蘭佳舎」さんで、そのラインナップがとにかく魅力的なのです。珍しい品種や新品種が豊富にあり、それを見ているだけで胸がときめいてしまうほど。どの時期でもクオリティが高いカトレアを生産できるスキルは本当にすごいと感心しています。それもそのはず、3軒の農家さんで協力して開花調整をし、一年中品質のよいカトレアを出荷できるように工夫しているのだそうです。
「蘭佳舎」さんで新しいカトレアを見つけると注文せずにはいられないので、しばらくカトレアのマイブームは続くと思います。皆さまもカトレアの気品ある美しさをぜひご堪能ください。
カトレアを使ったブーケ&アレンジメント
『家庭画報』とのコラボレーションで、フルール トレモロが選んだ季節の花を毎月お届けする花の定期便、2022年11月には「蘭佳舎」さんのカトレア‘アメシステラ’も加えました。ほかにファレノプシス‘氷晶’、ダイヤモンドリリー、バラ‘ローズシノ’、リシアンサス‘NFサマーグレープ’と‘モカグリーン’など。
染み一つない純白の花弁、エレガントで整った花形。白のカトレアの中でも人気が高い‘ハワイアンウエディングソング’の美しさにはいつも惚れ惚れします。
‘ハワイアンウエディングソング’とリシアンサス‘NFオトナホワイト’。質感の異なる真っ白い花を共演させたアレンジです。リンドウ‘深山淡麗’の鮮やかな青紫をアクセントに散らし、ローズマリーやスペアミント、ユーカリなどのハーブをあしらったさわやかな香りの贈り花です。
もう1種、純白のカトレア‘ホワイトブライダル’で制作したアレンジをご紹介。カラー‘スノーストーム’、バラ‘ブルーグラビティ’との花合わせで、大人っぽい気品漂う贈り花に。9月に制作したのでヨウシュヤマゴボウで動きを出しましたが、今の時期なら実ものを加えてもすてきです。
シズル感を感じるほどつややかな赤紫のカトレア‘ベニブドウ’。この華やかな色彩は圧倒的な存在感です。こちらも「蘭佳舎」さんから取り寄せました。
カトレアの‘ベニブドウ’とケイトウ‘アスカセレクト ラビリンス’。インパクトのある同系色に、大きなローズヒップ‘センセーショナルファンタジー’を合わせた晩秋の贈り花です。薬局の新店舗オープンのお祝いに和歌山にお届けしました。スペアミントやテマリシモツケ、ユーカリなどのリーフを加えると、個性的ながらナチュラル感のある仕上がりに。
カトレア‘ベニブドウ’とイトギク‘ミスロイヤルカール’。花の個性を際立たせるために、ミックスせずに固めて挿したデザインにしてみました。ダイヤモンドリリーやケイトウ‘デリーパール’を加え、ペニセタム‘ファーリー’の穂をあしらうと、華麗でモダンな雰囲気のアレンジに。
こちらも「蘭佳舎」さんから取り寄せたカトレア‘トゥルービューティー’。ごく淡い青みがかったピンクに花心のえんじ色の組み合わせが絶妙。波打つ花弁の縁も美しく、1本でも絵になるカトレアだと思います。
バラ、ラナンキュラス、スカビオサ、カーネーション。濃淡ピンクの上にふんわりとカトレア‘トゥルービューティー’をのせたアレンジ。華麗な雰囲気は誕生日などお祝いの贈り花にぴったりです。コニファー‘ブルーアイス’のスモーキーな葉色で、大人っぽくまとめました。
お部屋に飾る季節のブーケのオーダーをいただき、カトレア‘トゥルービューティー’とバラ‘マリアジュリエッタ’、スカビオサ‘フォーカルスクープ パープルレース’など束ねました。出始めのスイートピー‘ブルーフレグランス’を花色ミックスのブーケのアクセントに。ダスティーミラーやユーカリなどのシルバーリーフが落ち着いた雰囲気をもたらします。
少し黒みを帯びた赤のカトレア‘アフリカンビューティー’。カトレアの花色はバラエティーに富んでいて本当に魅力的です。バラの‘カルペディエム’と‘カタリナ’を合わせ、ゴージャスな雰囲気のアレンジを米寿(88歳)のお祝いに贈りました。
藤野幸信/Yukinobu Fujino広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書『大切な人への贈り花』も好評。
https://www.fleurs-tremolo.com インスタグラム
@fleurstremolo『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78大切な人への贈り花』 誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。詳細はこちら>>