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自分に合う漢方薬に出合うために知っておきたい基礎知識

2023.11.29

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〔連載〕天野惠子先生のすこやか女性外来  私たちが更年期以降を元気に過ごすためのヒントをたくさん教えてくださった天野先生が最終回に選んだテーマは「漢方薬」。長年の女性医療・女性外来の経験を通して、漢方薬は生涯にわたり女性の健康維持の頼もしい味方になると確信したそうです。漢方について学び、自分に合う漢方薬に出会えたら、一生の宝物になるのではないでしょうか。前回の記事はこちら>>

天野惠子先生(あまの・けいこ)


静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。

心身の不調を「気血水」「虚実」「五臓」でとらえる

「証」をつかむ診断法

検査の数値や画像をもとに診断する西洋医学と異なり、漢方では脈診、腹診、舌診、問診のほか顔色や全身の様子を目で観察する、声を聞く、臭いをかぐなど感覚で得た情報によって診断します。

「気血水」「虚実」「五臓」など独自のものさしを基準に体質や症状をとらえ、得られた「証」をもとに、漢方薬を処方するのです。

【気血水】

漢方では3つの基本物質「気血水」が体を構成すると考えます。これらが過不足なく、バランスよく、滞りなく流れている状態が健康で、変調が生じると病気になるととらえるのです。女性に生じやすい「気血水」の変調と主な症状を表に示しました。

*手足は冷えているのに上半身や顔は熱くなる状態

*手足は冷えているのに上半身や顔は熱くなる状態

【五臓】

肝 心 脾 肺 腎
西洋医学における肝臓、心臓などの臓器と同義ではなく、体の機能を含む広い概念です。更年期の女性が特に注目したいのは成長・発育・生殖を司る「腎」。加齢現象は「腎虚」(腎のエネルギーが不足した状態)と呼ばれています。

【虚実】

病気の原因と抵抗力(生命力)のせめぎ合いを「虚実」という概念で表します。


•不足の意味
•虚証は体力が低下し病気への抵抗力が衰えている状態

•充実の意味
•実証は体力があり病気と闘う力がある状態


漢方薬の原料は多種類の生薬

植物など天然素材の生薬を原料とする漢方薬は概して体に優しく種類も豊富で、体質改善の働きをするため、症状が多岐にわたる更年期症状や月経関連症状に効果を発揮しています。

漢方薬の原料は多種類の生薬 漢方薬は生薬を何種類か組み合わせて作られる。生薬の主な原料は植物の根、皮、果実、種子など薬効成分のある天然素材で、それらを乾燥させ細かくして調合する。

月経関連の症状改善にも役立つ漢方薬

同じ病名でも漢方薬には体質や症状によって異なる選択肢があります。

【月経困難症】主な原因は瘀血

月経時に下腹部痛のほか頭痛、吐き気、胃痛、便秘、不眠などの症状が起こり、社会生活に支障をきたす病気。ベースにあるのは瘀血。瘀血にどのような気血水の変調が絡んでいるかによって漢方薬を選択します。

・のぼせやニキビを伴う(瘀血が主)→桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
・色白でむくみやすい、冷えを伴う(瘀血+水毒)→当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
・ 不定愁訴が多い、冷えのぼせを伴う(瘀血+気逆)→加味逍遙散(かみしょうようさん)

【月経前緊張症(PMS)】瘀血に気逆が絡んだ状態

月経の3~10日前から腹痛、イライラ、憂うつなど精神的・身体的症状が起こり、月経が始まると軽くなる病気。ベースにあるのは瘀血と気逆。加味逍遙散(かみしょうようさん)を用い、効果が不十分であれば以下の漢方薬を処方します。

・イライラ感が強く、甘いものが食べたくなる→桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
・ストレスが強く、胃痛がある→安中散(あんちゅうさん)
・ストレスが強く、気持ちが落ち込む→香蘇散(こうそさん)


次回に続く

・連載「天野惠子先生のすこやか女性外来」記事一覧はこちら>>


*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:http://www.nahw.or.jp/hospital-info

*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。

公式サイト「女性外来オンライン」:https://joseigairai.online/

YouTube「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2023年12月号

家庭画報 2023年12月号

参考/『女性外来のための漢方処方ガイド』(じほう刊) イラスト/佐々木 公〈sunny side〉 取材・文/浅原須美

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