〔連載〕天野惠子先生のすこやか女性外来 私たちが更年期以降を元気に過ごすためのヒントをたくさん教えてくださった天野先生が最終回に選んだテーマは「漢方薬」。長年の女性医療・女性外来の経験を通して、漢方薬は生涯にわたり女性の健康維持の頼もしい味方になると確信したそうです。漢方について学び、自分に合う漢方薬に出会えたら、一生の宝物になるのではないでしょうか。
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心と体の更年期症状を軽くする漢方薬
天野惠子先生(あまの・けいこ)静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。
漢方薬は選択肢が豊富
更年期症状のベースに腎虚と気逆(
前回の記事を参照)があります。症状全般に使われる一般的な漢方薬は「三大処方」と呼ばれ、体質によって次のように使い分けます。実証(がっちりした体型で体力があり胃腸が丈夫なタイプ)には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、虚証(筋肉が少なく疲れやすく冷えの多いタイプ)には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、どちらにも偏らない中間証には加味逍遙散(かみしょうようさん)。
また表に示すように、心身の不調に細かく注目して症状別に漢方薬を選択する方法もあります。効果を試しながら、その人に合う漢方薬を選んでいきます。
漢方薬選択のための更年期症状チェックリスト
思い当たる症状に〇をつけましょう。Aは更年期の一般的な症状です。それ以外にB ~Fのどの項目に〇がついたかが、漢方薬選択の目安となります。
*あなたに合いそうな漢方薬は──
A+B 加味逍遙散(かみしょうようさん)、A+C 女神散(にょしんさん)、A+D 五積散(ごしゃくさん)、A+E 温経湯(うんけいとう)、A+F 八味地黄丸(はちみじおうがん)または六味丸(ろくみがん)参考/『女性外来のための漢方処方ガイド』(じほう刊)
医療機関を受診する以外に、薬局の薬剤師に症状や体質を説明して市販の漢方薬を購入し、効果を試してみるのも一つの方法。
天野先生の“とっておき”漢方薬処方
漢方薬には体質改善にゆっくり効果を表すものも多くありますが、特定の症状にピンポイントで働くものもあります。天野先生がこれまでに試してその効き目に驚いたいくつかの“特効薬”を、先生のコメントとともにご紹介します。
足の痙攣、こむらがえり
→芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)「筋肉の急な痙攣を和らげるので山登りには必携の漢方薬ともいわれています。尿管結石、胆管結石にも効く便利な薬です」
熱中症、二日酔い、下痢・嘔吐
→五苓散(ごれいさん)「水毒の特効薬です。特に子どもが水を飲んでも嘔吐してしまうような風邪をひいたときにもよく使います」
イライラが強い、怒りを抑えられない
→抑肝散(よくかんさん) 「興奮しやすく怒りっぽかったり、神経過敏で落ち着きのないときに気持ちを鎮める漢方薬としてよく使います」
頭痛、しゃっくり
→呉茱萸湯(ごしゅゆとう)「片頭痛でも緊張性頭痛でも種類を問わず頭痛全般に効くので重宝しています。しゃっくりも止まるので驚きました」
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*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:http://www.nahw.or.jp/hospital-info
*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:https://joseigairai.online/
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