クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第67回 ムソルグスキー『展覧会の絵』
イラスト/なめきみほ
製作者の名を持つ楽器サクソフォンが活躍する人気曲
今日11月6日は、ベルギーの楽器製作者でサクソフォンの発明者、アドルフ・サックス(1814~94)の誕生日です。
ブリュッセルで楽器製作を学んだサックスは、1841年にパリに移住。彼の名を残す楽器サクソフォンの開発に従事し、1846年に特許を取得します。その後も楽器製作を行いながら、パリ音楽院教授としてサクソフォン教育に携わった人でした。
この新しい楽器サクソフォンを使った作品の中でも最も有名な曲は、ムソルグスキー作曲ラヴェル編曲による組曲『展覧会の絵』です。本来はピアノ曲である同曲のオーケストラ編曲をラヴェル(1875~1937)に依頼したのは、指揮者セルゲイ・クーセヴィツキー。それを受けた“音の魔術師”ラヴェルの腕前は素晴らしく、『展覧会の絵』は一躍人気作品となったのです。
サクソフォンソロが登場する「古城」は要チェック。ちなみにラヴェルは『ボレロ』の中にもテナーサックスとソプラノサックスのソロを導入しています。きっとお気に入りの楽器だったのでしょうね。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。