クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第77回 ヒンデミット『ヴィオラとピアノのためのソナタ』
イラスト/なめきみほ
ヴィオラを愛した作曲家の素敵な遺産
今日11月16日は、パウル・ヒンデミット(1895~1963)の誕生日です。
ドイツ・ハーナウ出身のヒンデミットは、20世紀ドイツを代表する作曲家としてその名を知られる存在です。指揮者やヴィオラ奏者としても活躍し、1956年に行われた「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」の初来日公演においては指揮者として同行。17公演を指揮したことは、日本クラシック史のトピックといえます。
そのヒンデミットが愛した楽器ヴィオラは、ヴァイオリンよりも一回り大きく、1オクターヴほど低い音域を持った弦楽器です。ヴァイオリンの陰に隠れた地味な楽器と思われがちですが、深みのある柔らかな音色は、モーツァルトやブラームス、ベルリオーズなど、数多くの作曲家を魅了。彼らが手がけたヴィオラ作品が数多く存在します。
もちろんヒンデミットもその1人。代表作『ヴィオラとピアノのためのソナタ作品11-4』の憂いに満ちた美しいメロディからは、ヒンデミットのヴィオラ愛が伝わってくるようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。