クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第83回 ロドリーゴ『ある貴紳ための幻想曲』
イラスト/なめきみほ
優雅にして高貴な近代ギター代表作
今日11月22日は、スペイン近代の作曲家ホアキン・ロドリーゴ(1901~99)の誕生日です。
パリでデュカ(1865~1935)に学ぶことにより、スペインの伝統的な音楽と、宮廷風のバロック音楽やフランス近代音楽などをミックスさせるに至った作風はとても印象的。その成果が、20世紀最高のギター協奏曲である『アランフェス協奏曲』に結実したといえそうです。
そのロドリーゴが、『アランフェス協奏曲』完成の15年後の1954年に、スペイン・ギター界の巨匠アンドレス・セゴビア(1893~1987)からの依頼によって完成させた美しい作品が、ギターと管弦楽のための協奏曲『ある貴紳のための幻想曲』でした。
タイトルにある「貴紳」とは、「宮廷に仕える紳士」を意味すると同時に、この曲の素材を提供したサンスと委嘱者セゴビアの両名を指すともいわれています。完成した作品はもちろんセゴビアに献呈され、1958年3月、サンフランシスコでセゴビアのギターとエンリケ・ホルダ指揮、サンフランシスコ交響楽団によって初演されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。