クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第84回 ファリャ『火祭の踊り』
イラスト/なめきみほ
巨匠ルービンシュタインの思い出とともに蘇る人気曲
今日11月23日は、スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャ(1876~1946)の誕生日です。
それにしても一昨日から3日連続でスペインを代表する作曲家の誕生日が続くのもなにかの縁。スペイン音楽の濃密な世界をぜひご堪能いただきたいです。さて、パリでドビュッシーやラヴェルと交流したファリャの作風は、当時の最先端であった印象主義と、祖国スペインの民族音楽との融合系。オペラ『はかない人生』や、交響的印象『スペインの夜の庭』を始めとした、スペイン色濃厚な名作を数多く手がけます。
その後、作家ガルシア・ロルカ(1898~1936)らとの交流によって新たな音楽スタイルを模索しつつ、1939年のスペイン内戦終結後にフランコ政権を避けてアルゼンチンに亡命し、彼の地でこの世を去っています。
代表作のひとつ『火祭の踊り(恋は魔術師より)』を一躍有名にしたのが、20世紀を代表するピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982)でした。両手を高々と上げる演奏スタイルは、今も語り草です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。