クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第69回 J・S・バッハ『カンタータ第1番BWV 1』
イラスト/なめきみほ
BWV番号が生み出された理由とは
今日11月8日は、プロイセン生まれの音楽学者ヴォルフガング・シュミーダー(1901~90)の命日です。彼の功績は、バッハ没後200年にあたる1950年に発表されたヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750)の作品総目録番号(Bach-Werke-Verzeichnis)の開発です。
「BWV番号」と呼ばれるこのナンバリングシステムは、多くの作品を間違えることなく表記できるため、発表以来世界中の音楽学者や音楽家に採用され、今やバッハ作品における国際基準となっています。その特徴は、作曲順や出版順に振られる従来の作品番号とは異なり、バッハが手がけた作品のジャンルごとに番号が振られていることです。
その理由としては、バッハ作品の多くが、初演された日がはっきりしないため、作曲順を決めるのが難しいこと。さらには、完成した曲の変更や追加が頻繁に行われたため、完成版や決定稿というのがはっきりしないこと。それに対応するために、作品をジャンルごとに分けて番号を付ける方法が考え出されたのです。まさに画期的。
さて、気になる「BWV 1番」は、カンタータ第1番『輝く暁の明星のいと美しきかな』です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。