クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第71回 エンニオ・モリコーネ『ガブリエルのオーボエ』
イラスト/なめきみほ
映画音楽の巨匠モリコーネが、自ら最高傑作と認める名旋律
今日11月10日は、エンニオ・モリコーネ(1928~2020)の誕生日です。
イタリア・ローマ生まれのモリコーネは、名門ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院で作曲技法を学んだ後、テレビやラジオの音楽を手がけるようになります。その後映画の世界へ進出した彼を一躍有名にしたのが1960〜70年代に一世を風靡した“イタリア製西部劇”「マカロニ・ウエスタン」でした。
『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』の背景に流れる哀愁に満ちた音楽は今聴いても新鮮そのもの。モリコーネのセンスに感服です。1987年には『アンタッチャブル』でグラミー賞を受賞。その後も『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』などのヒット作を連発。手がけた映画音楽の数は生涯に500本以上を数える映画音楽の巨匠です。
そのモリコーネ自身最高傑作と語る作品が、映画『ミッション』のテーマ『ガブリエルのオーボエ』です。今やさまざまな楽器で演奏されるこの曲は、映画の内容に即した1750年当時のミサ曲と、そこに登場する南米グアラニー族の民族性を加味した名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。