クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第74回 ラヴェル『ピアノ協奏曲ト長調』
イラスト/なめきみほ
同時代の作曲家たちに敬愛されたピアノ界の名花
今日11月13日は、20世紀前半のフランスを代表するピアニスト、マルグリット・ロン(1874~1966)の誕生日です。
同時代の作曲家たちに敬愛され、数多くの作品の初演を手がけた彼女の名前を一躍有名にしたのが、ラヴェルの『ピアノ協奏曲ト長調』です。ラヴェルのアメリカ演奏旅行用に作曲された同曲は、当初ラヴェル自身のピアノで披露される予定でしたが、体調不良のために断念。信頼するマルグリット・ロンに献呈され、1932年、彼女の初演によって大きな成功がもたらされたのです。
ロンは1943年に、ヴァイオリニストのジャック・ティボー(※9月27日に紹介)とともに第1回「ロン=ティボー国際コンクール」を開催。同コンクールは今も若手音楽家の登竜門として有名です。
2011年からは声楽部門が加わり、現在では、レジーヌ・クレスパンの名前も加えた「ロン=ティボー=クレスパン国際コンクール」が正式名称。近年では、2022年のピアノ部門において、日本の亀井聖矢が優勝を果たしたことも記憶に新しい出来事です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。