クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第90回 プッチーニ オペラ『蝶々夫人』
イラスト/なめきみほ
プッチーニの不屈の闘志によって日の目を見た人気作
今日11月29日は、イタリアのオペラ作曲家プッチーニ(1858~1924)の命日です。トスカーナ北西部の都市ルッカに生まれたプッチーニは、イタリア・ロマン派オペラの最後を飾る作曲家です。
甘く抒情的な旋律とドラマティックな展開を持ち味とする作風を武器に、第3作『マノン・レスコー』の成功によって世に出たプッチーニは、『ラ・ボエーム』や『トスカ』などの名作を世に送りだし、最後の作品『
トゥーランドット』で、イタリア・ロマン派オペラの歴史に幕を閉じます。
そのプッチーニが興味を持った題材が、長崎を舞台にした日本人女性の物語『蝶々夫人』でした。日本文化を取り入れるためにさまざまな研究を重ねていたプッチーニは、自動車事故にあって大怪我を負いながらも作曲を継続。ようやく完成させたオペラをミラノ・スカラ座で初演します。
結果は大失敗で評判も散々。ひどく落ち込んだプッチーニでしたが、大幅な改訂を加えた3ヶ月後の上演は大成功を収め、今や世界中で愛される名作となっています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。