ジュエリー見聞録 12月 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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希少な日本の素材がイタリアから里帰り
解説/山口 遼(宝石史研究家)
日本という国は、ジュエリーを作る素材、つまり宝石の産出国としてみた場合、悲しくなるほどに哀れです。かろうじて養殖真珠がありますが、それ以外は珊瑚だけ。ともに海産物で、鉱物で高品質のものはほぼゼロ、すべては輸入素材です。
珊瑚は、古代からイタリアの沿岸をはじめとして、地中海沿岸部で広く採れていたもので、多くの遺品が残っています。そのほとんどはジュエリーというよりも一種の御守として使われていたようです。
色合いも白色からピンク、濃い赤色とさまざまです。資源としての地中海珊瑚は19世紀末になると枯渇し始め、ナポリを中心とするイタリア人たちが、世界の海に珊瑚を求めて動くようになります。そこで発見されたのが日本、それも高知県沖で採れる日本産珊瑚でした。
今回の「ダミアーニ」の新作は、珍しくこの日本産の珊瑚を使っています。なかでも日本では血赤と呼ばれる濃い赤色に少しオレンジ色が交じった独特の色合いのもの。オーバル形とドロップ形ですが、少し表面に丸みをつけた独特のカットにしたあたりは、さすがイタリア的です。
イタリアのジュエリーとしては、日本人好みの渋さがあるといいますか、全体にシックな色合いですが、まわりにちりばめられたサファイアが不思議なバランスで珊瑚を引き立てています。不透明で、これほどに鮮明な赤い宝石は珊瑚しかありません。今ではなかなか採れない日本の素材をイタリアで加工するとは、華やかで見事な里帰りですね。
繊細さと華やかさを併せ持つデザインミモザの花を表現した、ブランドを代表するコレクション。主石に赤珊瑚を用い、遠目にも際立つ印象的なジュエリーに仕上げています。繊細かつ立体感のあるセッティングが見事です。「ミモザ」ブレスレット(WG×赤珊瑚×ダイヤモンド×サファイア)1513万6000円 同ピアス(WG×赤珊瑚×ダイヤモンド×サファイア)581万9000円/ともにダミアーニ
●お問い合わせ/ダミアーニ 銀座タワー TEL:03(5537)3336