クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第75回 レオポルト・モーツァルト?『おもちゃの交響曲』
イラスト/なめきみほ
アマデウス(神に愛されし者)を育て上げた至福の父
今日11月14日は、レオポルト・モーツァルト(1719~87)の誕生日です。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~91)の父である彼は、息子の驚異的な才能を発見。当時考えうる最高の音楽教育をほどこしたことにより、比類なき作曲家を誕生させたことで知られます。
同時代の作曲家ハイドンは「誠実な人間として申し上げますが、あなたのご子息は私の知る限り最も偉大な作曲家です。良い趣味と優れた作曲技術をお持ちです」とレオポルトに伝え、生涯独身のブラームスは「モーツァルトの父親みたいに天才的な息子を授かって自分の知識をすべて傾けられるものなら、結婚だってしたくなるさ」とつぶやきます。親としてこれ以上の幸せはないでしょう。
そのレオポルトの作品と伝えられていたのが『おもちゃの交響曲』です。長くハイドンの作品とされていた同曲が、レオポルト作とされたのは1951年。しかし近年の研究によって、チロル出身の作曲家アンゲラー作であることが判明したのだとか。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。