がんまるごと大百科 最終回【心のケア編】(01)がんは体だけでなく、心にも大きな影響を与えます。患者だけでなく、家族など周囲の人たちも含め、うつ状態に陥ったり、体調をくずしたりすることは珍しくありません。連載最終回は、がんの心のケアについて、国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科 科長の松岡弘道先生に伺います。
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患者が感じる不安や悩みに寄り添ってくれる専門家がいます
松岡弘道(まつおか・ひろみち)先生国立がん研究センター 中央病院 精神腫瘍科 科長 支持療法開発室長。 2002年奈良県立医科大学卒業、12年近畿大学大学院医学研究科修了。同大学医学部腫瘍内科等を経て、17年豪州テクノロジー・シドニー大学客員教授。19年近大医学部心療内科准教授、20年国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科科長、23年から支持療法開発室長を兼任。
悪い知らせの後、うつ状態が長く続く場合は診察を
がん患者は、がんによって大きな不安や悩みを抱えます。
例えば、“がんの疑いがある” “がんと診断された” “再発や進行がわかった” “積極的な治療法がないと告げられた”というような、自身のがんに関連する悪い知らせを受けたときには、当然ながら、誰もが大きなショックを受けます。そして、頭が真っ白になる、何も覚えていないといった状態になることがあります。
将来の見通しを根底から否定的に変えてしまう悪い知らせを受けたときの心理状態の経過は、「一般的には、2、3日は衝撃を受け、“これからどうなってしまうのだろう”という不安、“間違いに違いない”という認めたくない気持ちや “なんで私がこんな目に遭うのか”という怒り、“もう何もできない”といった絶望的な感情が湧き出てきます。
そして、2週間くらいまでは不安に加えて、不眠、うつ、食欲低下、集中力の低下などがあらわれ、頭痛や動悸、首や肩のこりのような体の症状が出ることもあります。その後、4週間、ときには12週間くらいまでに少しずつ現実を受け入れて適応していきます。ただ、適応できるようになっても疎外感や孤独感が残ることもあります」と松岡弘道先生。
一方、この適応がうまくいかず、うつ状態が続くこともあり、その場合には治療の対象になります。