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美味手帖

縁起のいい食材を使った和菓子は、手土産におすすめ。「栗」と「丹波黒」の寒天よせ

2023.11.21

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エッセイ連載「和菓子とわたし」

「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2023年12月号に掲載された第29回、ヤマザキマリさんによるエッセイをお楽しみください。

vol.29 母の演奏旅行と筒形の羊羹
ヤマザキマリ
札幌交響楽団のヴィオラ奏者だった母は、演奏旅行に出かけると留守番をしている2人の娘のために、なにがしか現地のお土産を持って帰ってきた。あの少し変わった羊羹との出会いも、やはり母の演奏旅行のお土産としてだった。道南の古い街での演奏会を終えて、列車に乗って戻ってきた母が得意気にカバンから取り出したのは、レトロな柄の赤い包みに包まれた、直径3センチほどの円筒だった。筒の下から親指で中の羊羹を押し出し、それを付属している白い糸で好みの大きさに切って食べるという仕組みで、私も妹も羊羹そっちのけでその梱包に夢中になった。糸をそのまま切り口に対して水平に引っ張れば平たい形になるが、少し力を加えて動かすと表面は波形になる。


「遊んでないで食べてごらんなさい。羊羹、美味しいんだから」と母に呆れられて自分が切ったおかしな形の羊羹をひとくちつまんでみると、甘みの抑えられた品の良さを感じる味覚が口の中に広がった。そのお土産の羊羹は容器の特異性も含め、子供心にも刻印される印象深さがあった。

母はその後も物産展やデパートなどでその筒形羊羹を見かければ必ず調達し、私も海外で暮らすようになってからは、自分用とお土産用に持ち帰るようになった。母が懇意にしていた北イタリアの家族の家を訪れる時もお土産はいつもそれだったし、その後私の夫となるその家の長男も、それがきっかけですっかり羊羹とあんこのファンになってしまった。

この夏、夫が日本を訪れた際に息子と3人で道南の温泉を訪れた時に例の筒形の羊羹を見つけ、完成したばかりの彼女のお墓へ行って一本だけお供えをした。

「あら嬉しいわ、これが食べたかったのよ!」という母の声がどこからか聞こえてくるような気がした。

ヤマザキマリ
漫画家、文筆家、画家。1967年東京都出身。84年にイタリアに渡り、フィレンツェ・国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。2010年に漫画作品『テルマエ・ロマエ』が一世を風靡する。以降も漫画、エッセイなど著書多数。15年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。17年、イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受章。近著に『猫がいれば、そこが我が家』(河出書房新社)。
宗家 源 吉兆庵
TEL 0120-277-327
https://www.kitchoan.co.jp/
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