アンティークからブランドの逸品まで 一生もののカトラリーと出合う テーブル上でプレートの横に並ぶカトラリーは手で持ち、口に触れる機会の多い物ですが、一度入手すれば破損も少なく、長く愛用できます。子ども、孫の世代にまで使い継いでほしいと思えるカトラリーを探しに出かけてみませんか。
「アンティークギャラリー 虎徹」に教わる
英国製アンティーク、受け継がれる“本物”の魅力
1908年に製作、アンティークの英国スターリングシルバーの12名用デザートカトラリーセット。デザートナイフ、フォーク、スプーンに加え、8本のフルーツサービングスプーン、アイスクリームスプーン、グレープシザーズ、ナッツクラッカ-の59ピースが揃うのは稀少。立体的な葡萄の蔓の装飾が見事です。箱の証書には王室の5つの紋章が記載。アンティークギャラリー 虎徹にて。価格は要問い合わせ。SS、ロンドン、Elkington & Co.Ltd
札幌で「アンティークギャラリー虎徹(こてつ)」を営む藤嶋誠一郎さん、優子さん。「アンティークシルバーは何百年も前に作られ、今ここにある。作られたかた、受け継いだかたの想い、注がれた愛情が感じられます」と話します。
1300年代、英国では純度92.5パーセントを“スターリングシルバー”と制定し、貨幣と同等価値として認定。16世紀後半には銀の採掘量が増加し、王侯貴族が富の象徴としてスターリングシルバーのカトラリーを用いるようになりました。
ジョージ一世からウィリアム四世の時代(1714~1837年)には、卓越した技術を有するシルバースミス(銀細工職人)が現れ、傑作が次々と誕生。ヴィクトリア女王の時代には、大英帝国の全盛を表すように“パターン”と呼ばれる装飾が施され、競うように美しい意匠が生まれました。
「英国銀器は、王室が途絶えなかったからこそ、今に残っているといえます。小さな世界に歴史や文化が凝縮しているのです」と藤嶋さん。
熟練の職人が手間と時間を惜しまず、最高峰の技で手がけた麗しいカトラリー。手にすればきっと、時を超えて巡り合えた奇跡を感じることでしょう。
右:King’s Patternヴィクトリア王朝の始まりとともに誕生。バイオリンシェイプのハンドル、ハンドルトップと接合部に貝殻紋様、中央にスイカズラ紋様の装飾が特徴。「キングス・テーブルカトラリー」SS、ロンドン、1845年、 George William Adams、240万円(12名セット)
左:Queen’s Patternキングスパターンを基本に、より優美さを追求し考案された。スイカズラ紋様の中にロゼット紋様(花形の勲章)を施し、装飾も繊細に立体的に進化。「クィーンズ・テーブルカトラリー」SS、ロンドン、1875年、 George William Adams、120万円(6名セット)
右:Mother of Pearlインドを植民地としたヴィクトリア時代、インド洋のマザーオブパールなど、稀少な資源が各地から集結。持ち手の分厚さが豊かさを象徴。「マザーオブパール・フィッシュカトラリー」SS×MOP、シェフィールド、1895年、Mappin & Webb Ltd、35万円(6名セット)
左:Vine Style古代オリエントより繁栄を意味する葡萄。絡み合う葡萄の蔓を、生き生きと立体的にかたどったヴァインスタイルは、銀細工の技のピークを迎えたヴィクトリアン後期の代表的な意匠。「デザートカトラリー」SS、ロンドン、1908年、Elkington & Co.Ltd(12名セット)
Art Déco1910年代半ばから1930年代に流行したアールデコは、銀器にも盛んに用いられた。この頃には加工技術も発展し、異素材との組み合わせも多彩さを増していった。「デザートカトラリー」SS×G×MOP、ロンドン、1914年、Crichton Brothers、45万円(12名セット)
※素材の表記は、SS=スターリングシルバー(純度92.5%) SP=シルバープレーテッド(銀メッキ) G=ゴールド MOP=マザーオブパール(白蝶貝)
※ナイフは刃がステンレス製の場合があります。
(次回へ続く)
アンティークギャラリー 虎徹札幌市中央区宮の森三条10丁目3-3 ステータスビル1階
TEL:011(621)3030
営業:12時~17時 日曜・祝日定休
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