100年を超える歴史を紡ぎ、ルネッサンス以来の職人技を正しく継承する稀有なジュエラー「ブチェラッティ」。そのエレガンスとクラシシズムは創業者一族によって守られ、遠い未来に受け継がれてゆきます。
軽やかに透けるオープンワーク、艶めくゴールド、そしてアンティークと見まがう手の込んだ意匠。1919年に創業した「ブチェラッティ」は、昔ながらの精巧な手作りを今なお続ける、イタリア・ミラノの名門。創業者直系の3代目、アンドレア・ブチェラッティがクリエイティブディレクターを務めるこの老舗は、ほかの誰も真似できないような独自の技術を誇ります。
ルネッサンス期に栄えた伝統の金細工を復活させ、現代的な大量生産に背を向けて丹念に仕立てる作品は、まさに職人たちのアルテ(芸術的な技)そのものの趣。手仕事とはこれほど美しいものを生み出せるのかと、驚かされるばかりのハイジュエリーに駆使された技は、4代目となる娘のルクレツィアたち次世代に確かに継承され、唯一無二の価値を備えて輝き続けます。
豊かな自然は大いなるインスピレーション源。個性あるバロックパールを使い、命あるものを格調高く表現したブローチ。
多彩な彫金の技を注ぎ込んだブチェラッティならではのデザイン。熟練の職人がゴールドの表面に手作業で細い線を彫り込み、シルク地のように上品な光沢を生み出しています。そこに、手編みのレースや刺繡を思わせる透かし細工や煌めくダイヤモンドで、優雅な花形と幾何学模様のロゼットを華やかにあしらいました。
ダイヤモンドを配した絢爛たるデザイン。表側だけでなく側面や背面にも緻密なエングレーヴィングを施しているのがブチェラッティならでは。
撮影/大原敏政〈aosora〉 取材・文/本間恵子 『家庭画報』2024年1月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。