クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第92回 バルトーク『管弦楽のための協奏曲』
イラスト/なめきみほ
最晩年のバルトークを目覚めさせた友情の絆
今日12月1日は、ベラ・バルトーク(1881~1945)の『管弦楽のための協奏曲』初演日です。
20世紀ハンガリーを代表する作曲家バルトークは、現代音楽の牽引者であると同時に、民族音楽の専門家&ピアニストとしても傑出した才能の持ち主でした。その彼の最高傑作とたたえられる作品が『管弦楽のための協奏曲』です。
第二次世界大戦勃発をきっかけにアメリカに移住したバルトークでしたが、環境になじめず、創作意欲も薄れて困窮します。その彼を救うべく、ボストン交響楽団の音楽監督セルゲイ・クーセヴィツキー(1874~1951)が破格の条件で委嘱した作品が同曲でした。その背景には、バルトークを思いやるハンガリー出身の音楽家たちによる友情の絆があったのです。
初演は1944年12月1日。ボストンにおいて、クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団の演奏によって行われています。時にバルトーク63歳。翌年9月にこの世を去るまでの最晩年の充実した創作活動は、この作品を手がけたことがきっかけだったといわれています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。