クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第93回 プッチーニ オペラ『トスカ』
イラスト/なめきみほ
歌に生き恋に生きた、マリア・カラスの真骨頂
今日12月2日は、マリア・カラス(1923~77)の誕生日です。
今年生誕100年を迎えたカラスは、ジャズのマイルス・デイビスや、ポップスのフランク・シナトラらと同様、クラシックを象徴する強力なアイコンです。その最大の特徴は、圧倒的なテクニックに裏打ちされた歌唱力と迫真の演技。一声でカラスとわかる独特の声質を生かした彼女の存在は、オペラ自体の価値観を変えるほどの影響力があったといえそうです。
その彼女が得意としていた作品の一つが、プッチーニのオペラ『トスカ』でした。画家カヴァラドッシと、その恋人で有名な歌手トスカの悲恋を描いたこの物語は、オペラ史上屈指の傑作として今も世界中のオペラファンに愛されています。
ちなみにカラスが残した主なオペラ映像は、1958年のパリ・オペラ座での『トスカ』第2幕と、1964年のコヴェントガーデンでの同じく『トスカ』第2幕のみ。歌姫トスカが憑依したかのようなカラスのステージは、オペラファンならずとも必見です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。