クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第97回 シベリウス 交響詩『フィンランディア』
イラスト/なめきみほ
フィンランド独立運動の機運を高めた人気曲
今日12月6日は、フィンランドがロシアから独立を果たした記念日です。(1917年)
19世紀末、フィンランド民族はロシア帝国からの政治干渉に反発し、独立運動が盛り上がりました。そうした中、愛国劇の音楽を依頼されたジャン・シベリウス(1865~1957)は、そのクライマックスの音楽として『フィンランドは目覚める』という曲を提供します。それを改稿し、1900年7月2日に初演された作品が、シベリウスの代表曲にして、オーケストラの重要なレパートリーとなっている名曲『フィンランディア』です。
この作品は、北欧の国フィンランドの作曲家シベリウスの名を世界中に知らしめるとともに、独立運動の高まりとも相まって、フィンランド民族のシンボルとなったのでした。それを危険視した帝政ロシア政府が演奏禁止にしたことも有名な逸話です。
なお、同曲に歌詞をつけた『フィンランディア賛歌』は、現在もフィンランドの“第二の国歌”として愛されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。