クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第98回 マスカーニ オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』
イラスト/なめきみほ
ドロドロの人間模様を包み込む美しい音楽に癒やされる
今日12月7日は、19世紀末から20世紀初頭のイタリアの文化運動「ヴェリズモ」を代表するオペラ作曲家、ピエトロ・マスカーニ(1863~1945)の誕生日です。
「ヴェリズモ」とは、人々の日常生活や実際に起きた事件などを題材として、感情豊かに表現することを特徴とした文学や音楽などの総称です。イタリア最南端の美しい島シチリアを舞台にしたマスカーニのオペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』はその代表作。シチリアで実際に起こった事件を題材としたこのオペラは、ドロドロの人間模様を描いた1幕ものの傑作です。
美しいアリアの数々とともに、ひときわ印象的な「間奏曲」は、さながら一服の清涼剤のような趣です。同じ時期に活躍したレオンカヴァッロ(1857~1919)のオペラ『道化師』とのカップリングは、オペラ公演の定番にしてヴェリズモ・オペラの魅力が満載。これからオペラを楽しもうという方にもおすすめです。なにはともあれ、恋と嫉妬と裏切りと殺人こそが、オペラの醍醐味といえそうですね。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。