クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第99回 シベリウス『交響曲第5番』
イラスト/なめきみほ
フィンランドの自然が反映されたシベリウスの名旋律
今日12月8日は、ジャン・シベリウス(1865~1957)の誕生日です。
7つの交響曲やヴァイオリン協奏曲、そしてフィンランド独立のシンボルとなった『フィンランディア』などによって、フィンランドの国民的大作曲家となったシベリウスですが、若き日にはヴァイオリニストを目指していたのです。しかし、あがり症のためにウィーン・フィルの入団試験に失敗。演奏者の道を諦めて作曲家となったというのですから、人生はわからないものです。
順調にキャリアを積んでいたシベリウスを襲ったのが、第一次世界大戦の勃発でした。祖国フィンランドも厳しい経済状況に陥り、シベリウス自身も創作意欲を失ってしまいます。そんな中、祖国の空を舞う16羽の白鳥を目にしたことで、人間同士の争いを越えた自然の持つ生命力のすばらしさに感動。創作意欲を取り戻したシベリウスが書き上げた新作が『交響曲第5番』でした。
作品は、1915年12月8日のシベリウス誕生50周年祝賀コンサートで披露されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。