クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第106回 バード『パヴァーヌとガイヤルド』
イラスト/なめきみほ
フェルメールが聴いていたいにしえの調べに耳を澄ます
今日12月15日は、オランダ・バロック期を代表する画家ヨハネス・フェルメール(1632~75)の命日です。
寡作な彼が残した『ヴァージナルの前に座る女』『ヴァージナルの前に立つ女』と『音楽の稽古』に、鍵盤楽器の一種「ヴァージナル」が描かれていることは見逃せません。「ヴァージナル」とは、15世紀から18世紀のヨーロッパで愛好されたチェンバロの一種で、長方形の胴体に鍵盤と平行に弦が張られた楽器です。音を出す機構は、チェンバロ同様弦を弾く仕組みのため、強弱がつけにくく、音も極めて繊細です。
ちなみにハンマーで弦を叩いて音を出す「ピアノ」の正式名称は「ピアノフォルテ」。小さな音から大きな音までを自在に出せることを意味した「ピアノフォルテ」が短縮されて「ピアノ」と呼ばれるようになったのです。
さて、フェルメールが聴いていたヴァージナルの響きやいかに。イングランドで活躍したルネサンス期の作曲家ウィリアム・バード(1540頃~1623)の『パヴァーヌとガイヤルド』あたりはいかがでしょう?
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。