クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第109回 J・S・バッハ『無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番“シャコンヌ”』
イラスト/なめきみほ
すべてのヴァイオリニストにとっての試金石であり指標
今日12月18日は、イタリア北西部の町クレモナのヴァイオリン製作者アントニオ・ストラディヴァリ(1644?~1737)の命日です。
16世紀の初めに北イタリアで生まれたとされるヴァイオリンは、オーケストラで活躍する弦楽器の中で最も小さく、最も高い音域を担当しています。16世紀後半から18世紀前半にかけて登場した、ニコロ・アマティやグァルネリ一族、そして名高いアントニオ・ストラディヴァリなどの優れた製作者によって生み出された名器の価値は高く、今も世界中の名ヴァイオリニストたちによって大切に使われています。
このすばらしい楽器のためにJ・S・バッハが残した無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータは、ヴァイオリンに可能なあらゆる技巧が盛り込まれたヴァイオリニストにとっての試金石といえる名作です。中でも単独で演奏されることの多い“シャコンヌ”は、1720年に病によって亡くなった最愛の妻バルバラへの哀悼のコラールを織り込んだと伝えられる名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。