クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第110回 プーランク 『エディット・ピアフをたたえて』
イラスト/なめきみほ
クラシック界にもその名を残すシャンソンの女王
今日12月19日は、『愛の讃歌』や『ばら色の人生』などのヒット曲で名高いシャンソン歌手、エディット・ピアフ(1915~63)の誕生日です。
フランスで最も偉大な歌手の1人としてたたえられ、今も愛され続けるピアフの名は、さまざまな形で歴史に刻まれています。その1つが同時代を生きたフランスの作曲家、フランシス・プーランク(1899~1963)の名作『エディット・ピアフをたたえて』でしょう。
1932年から59年までの間に書かれた15曲の「即興曲」は、さながらプーランクが音楽で綴った風景画のような趣です。その最後を飾る『エディット・ピアフをたたえて』の、美しくも気だるい雰囲気を醸し出す音楽からは、ピアフへの熱い思いがあふれ出るようです。
そのプーランクゆかりの詩人で、ピアフと親しかったジャン・コクトー(1889~1963)が、ピアフの訃報に衝撃を受け、「なんということだ……」と言いながら寝室にこもり、そのまま心臓発作で亡くなったことも伝説です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。