クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第111回 ストラヴィンスキー『ペトルーシュカからの3楽章』
イラスト/なめきみほ
世界一の難曲をオーダーした巨匠のお洒落な言い訳!?
今日12月20日は、ポーランド出身の偉大なピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982)の命日です。
20世紀最高の解釈とたたえられたショパンを中心に、幅広いレパートリーを誇ったルービンシュタインは、同時代の作曲家からも数々の作品を献呈されています。中でも有名なのが、ストラヴィンスキー(1882~1971)の『ペトルーシュカからの3楽章』でしょう。
20世紀最大の作曲家ストラヴィンスキー初期の傑作として知られるバレエ『ペトルーシュカ』をピアノ独奏用に編曲・再構築したこの作品は、「世界一難しい曲を」というルービンシュタインからのオーダーを受けたストラヴィンスキーが手がけた難曲です。
ついにこの曲を録音することのなかったルービンシュタインは、「若い女性にプロポーズするのは、『ペトルーシュカ』をピアノで弾くよりもほんの少し勇気がいる」と語っています。これはまさに、伊達男として知られたルービンシュタインならではのお洒落な発言ですね。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。