クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第112回 ショパン 『ノクターン第20番嬰ハ短調“遺作”』
イラスト/なめきみほ
映画『戦場のピアニスト』で名高い“遺作”
今日12月21日は、20世紀を代表するヴァイオリニストの1人、ナタン・ミルシテイン(1904~92)の命日です。
J・S・バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ』の解釈などが高く評価されるミルシテインの業績の中でも見逃せないのが、ヴァイオリンのための優れた編曲作品を数多く残したことでしょう。
その代表作が、ショパンの『ノクターン第20番嬰ハ短調“遺作”』です。今では、第2番(作品9-2)と並ぶ「夜想曲(ノクターン)」の人気曲に数えられるこの曲が作曲されたのは1830年。しかし出版されたのはショパンの死の26年後の1875年であることから“遺作”と呼ばれるようになったこの曲は、『ピアノ協奏曲第2番』を練習する姉のためにショパンが用意した小品でした。
この曲を一躍有名にしたのが2002年公開の映画『戦場のピアニスト』です。哀愁に満ちた美しいメロディは、今やショパンの代名詞として親しまれています。ちなみに「遺作」とは、作曲者の死後に発表された作品の総称です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。