クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第116回 J・S・バッハ『クリスマス・オラトリオ』
イラスト/なめきみほ
宗教の有無を超えて人の心をかき立てるクリスマスの名曲
今日12月25日は、イエス・キリストの降誕を記念する「クリスマス」です。
教会が起源の1つであるクラシック音楽には、クリスマスにちなんだ作品がたくさんあります。中でも、ヘンデル(1685~1759)のオラトリオ『メサイア』と並んで最も有名にして華やかな作品が、J・S・バッハ(1685~1750)の『クリスマス・オラトリオ』でしょう。
クリスマスシーズンに教会で演奏することを目的に作曲されたこの曲は、今も、このシーズンには欠かせない音楽として、教会やコンサートホールで演奏される名曲です。初演は1734年のクリスマス。勤勉なバッハは、ライプツィヒの聖トーマス教会の聖歌隊を率いて、聖ニコライ教会と聖トーマス教会の2つを行き来しながら、3日間かけてこの長大なオラトリオを演奏したというのですからびっくりです。
ティンパニの連打で始まる華やかな冒頭の音楽は、宗教の有無を超えて心が浮き立つこと間違いなし。さらには第2部冒頭の「シンフォニア」の美しさも破格です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。