クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第118回 スーザ『星条旗よ永遠なれ』
イラスト/なめきみほ
アメリカ第二の国歌にしてマーチ王スーザの最高傑作
今日12月27日は、アメリカの作曲家ジョン・フィリップ・スーザ(1854~1932)の行進曲『星条旗よ永遠なれ』の初演日です。(1896年)
ワシントン海兵隊楽団を起点として、海軍士官として従軍した“マーチ王”スーザの最高傑作にして、“アメリカ第二の国歌”とたたえられるこの曲は、吹奏楽ファンを中心に、世界中で愛され続けてきた名曲中の名曲です。
作曲されたのは1896年。ヨーロッパ旅行中のスーザのもとに、マネージャーで親友ブレイクリーの訃報が届き、急遽祖国アメリカへ帰る船の上で着想し、帰国後に完成させたと伝えられる名旋律です。この曲をこよなく愛したスーザは、ほぼすべてのコンサートにおいて指揮を行い、作曲から約100年後の1997年には、「アメリカ合衆国公式行進曲」に制定されています。
ロシアからアメリカに移住した“20世紀最大のピアニスト”、ウラディミール・ホロヴィッツがピアノ用に編曲したことも語り草。10本の指で弾いているとは到底思えない脅威の演奏録音が残されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。