クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第120回 カタルーニャ民謡『鳥の歌』
イラスト/なめきみほ
私の故郷カタルーニャの鳥は、“ピース、ピース”と鳴くのです
今日12月29日は、スペインの名チェリスト、パブロ・カザルス(1876~1973)の誕生日です。
チェロの近代的奏法を確立したことはもとより、それまでは単なる練習曲と考えられていたJ・S・バッハの『無伴奏チェロ組曲』を発掘し、その真価を世に知らしめたカザルスの業績は圧倒的です。さらには、平和活動家としての存在感も大きく、音楽を通じて世界平和のために尽くした姿は、数々の名演奏とともに、人々の記憶に深く刻まれています。
そのカザルスを象徴する作品が、カタルーニャ民謡『鳥の歌』です。カザルスの愛奏曲にして、故郷カタルーニャへの想いと平和への願いが織り込まれたこの曲は、1961年11月13日にケネディ大統領の招きに応じたホワイトハウスでのコンサートで演奏されたほか、1971年10月24日にはニューヨーク国連本部でも演奏されています。
時にカザルス94歳。演奏に際し、「私の故郷カタルーニャの鳥は、“ピース、ピース”と鳴くのです」と語ったことも、いまや伝説です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。