クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第121回 レハール オペレッタ『メリー・ウィドウ』
イラスト/なめきみほ
ミュージカルの礎となった極上のエンターテインメントがここに
今日12月30日は、オーストリアの作曲家フランツ・レハール(1870~1948)のオペレッタ『メリー・ウィドウ』の初演日です。(1905年)
「ウィンナ・オペレッタ 銀の時代」と呼ばれる華やかな時代を象徴する作曲家レハールは、父親同様軍隊楽長を務めつつ作曲家としてデビュー。ワルツ『金と銀』の成功によって軍楽隊を辞め、作曲家としての活動に専念。代表作として名高いオペレッタ『メリー・ウィドウ(陽気な未亡人)』の大成功によって、一躍人気作曲家の仲間入りを果たしたのです。
アンリ・メイヤックの戯曲『大使館員付随員』を原作としたこの作品は、莫大な遺産を相続した美しい未亡人ハンナを巡るロマンチックなドタバタ喜劇。有名な二重唱「唇は語らずとも」や、ゴージャスなフレンチ・カンカンなど、後に英語圏で誕生した「ミュージカル」にも通じる楽しさは、まさに極上のエンターテインメントといえそうです。
作品のヒットによって、帽子やカクテルなど、メリー・ウィドウの名をつけた商品が大流行したというのも今風ですね。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。