「お母さんによく言われたのは“あなたたちは2人で1人なのよ。としみつちゃんは手が不自由だからつとむちゃんがお兄ちゃんの手になってあげればいいし、としみつちゃんは足が丈夫だから、歩きにくいつとむちゃんを助けてあげればいいの。考え方や好みとかが違っていても、何かをやるっていうときには同じ気持ちじゃないとダメよ。これは一生の約束だからね”。まり子お母さんが天国に急に旅立ってしまってから、その言葉の意味とか、重さとか、お母さんが僕たちに伝えたかったことが一気に心の中に入ってきました」
つとむさんが幼少時に宮城まり子さんからもらった“輪っか”。「みんな仲良く、気持ちを一つに」という言葉とともに数人の生徒に一つずつ贈られ、集めればネックレスになるパーツだった。
隣で聞いていたとしみつさんは、うなずきつつも照れくさそうにしていましたが、宮城さんが亡くなる1年前の誕生日の思い出を語ってくれました。
静岡県掛川市のねむの木村にある宮城まり子さんのお墓。墓碑には「やさしくね やさしくね やさしいことはつよいのよ」という宮城さんが大切にしていた言葉が刻まれている。
「お母さんは酸素を吸っていて、しんどそうだったんだけど、“明日は誕生日だからお出かけしよう”って誘ったら“行く”って言うから静岡のデパートに出かけて、僕たちからバッグをプレゼントしました。お母さんが好きなとろろ丼のお店を予約しておいたら、一緒に食事もできてすごく喜んでいました。最後の誕生日のお祝いができてよかったです」
どの瞬間も2人の心に深く刻まれています。
吉行淳之介文学館にある「和心庵」という茶室では、ねむの木の子どもたちにお点前をしてもらえる(有料)。亭主を務めるのは“ほんめつとむ”さん(左奥)。
2006年10月に行われた「第37回ねむの木学園運動会」より。一般的な運動会とは異なり、宮城さんの演出でダンスやコーラスなどを披露するという内容だった。見学のお客さまへのおもてなしとして、授業で習った茶道も披露された。
2007年5月31日、『ねむの木のこどもたちとまり子美術展「わたし うれしい。」』の会場で、オープニングセレモニーとしてコーラスを披露する様子。宮城さんの指揮に合わせて子どもたちの美しいハーモニーを届けた。生徒54人の作品を展示したこの美術展は、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで2007年6月1日から1か月間開催された。
ねむの木学園の創立40年目を記念して開館した「ねむの木こども美術館 どんぐり」。2007年4月15日の行事にて。藤森照信さんの設計でドーム屋根をどんぐりに見立てている。外壁に描かれたカラフルな花の絵は子どもたちによるもの。
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