ジュエリー見聞録 1月 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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シンプルなものほどデザインが難しい
解説/山口 遼(宝石史研究家)
この「ブシュロン」のネックレスを見て、アレと思わないでください。どこから見てもクエスチョンマーク、日本語ならハテナ印か疑問符といいますか、何かを疑うときに使いますよね。しかしこれは、女性たちを自由へと解放したジュエリーの象徴でもあります。
かつて上流階級の女性たちは、侍従の助けのもとでネックレスを着けていました。それを1879年、創業者のフレデリック・ブシュロンがクラスプのないネックレスを考案したことにより、自由に着脱できるジュエリーが誕生。ジュエリー着用の慣習を変える大きな発明として人気を博します。以来ブランドのアイコンとして、さまざまな素材やデザインが作られています。
このタイプのデザインは、ネックレスの円環の一部を開けて、そこから首を入れるように作ります。円環が開いてまたもとに戻るのですから、どこかにばねを仕込む必要があります。外見的には全周にダイヤモンドを埋めながら、その下に、おそらくステンレスかハガネを埋め込み、弾性を作り出しているところに、ブシュロンの技術の高さが伺えます。
昔はよく金にニッケルを増やして、貴金属そのものに弾性を持たせましたが、長持ちしないために、今では金の裏面にハガネなどを入れて作ります。するとこの作品のように、非常にすっきりと、首にぴったりと貼りつくようなネックレスができあがります。
先端にはドロップカットのダイヤモンドを1個ぽんと吊り下げていますが、面白いのは、この部分だけ取り外して指輪にセットできること。いろいろと工夫しますね。シンプルなものほどデザインが難しい、それを見事に乗り越えた傑作です。
ネックレスとしても、リングとしても楽しめるマルチウェアクラスプがなく、スプリング式で着脱のストレスがないネックレスは、ブランドの職人技を物語るデザイン。ペンダントトップは、ペアシェイプのダイヤモンドのまわりをさまざまなカットのダイヤモンドが立体的に取り囲み、表情豊かな煌めきを叶えています。付属のシャンクに装着すれば、リングとして楽しむこともできます。エタニティ ネックレス(WG×ダイヤモンド・センター2.09ct)6600万円/ブシュロン
●お問い合わせ/ブシュロン クライアントサービス TEL:0120-230-441