サイレントキラーの病に備える 第1回(02)2024年の新連載は、気づかないうちに体を蝕み、進行すると命にかかわる病気を取り上げます。第1回は「慢性腎臓病(CKD)」です。東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻 教授(腎臓・内分泌内科)の南学正臣先生にCKDの怖さや予防、早期発見について伺います。
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サイレントキラーの病に備える 慢性腎臓病(CKD)
[お話を伺ったかた]南学正臣先生東京大学大学院医学系研究科
教授(腎臓・内分泌内科)南学正臣先生
なんがく・まさおみ 1988年東京大学医学部を卒業後、ワシントン大学腎臓内科に留学。98年から東大附属病院に勤務し、2012年から東大大学院医学系研究科内科学専攻 教授、同大医学部附属病院腎臓・内分泌内科科長、23年東大大学院医学系研究科 研究科長・医学部長。現在、日本内科学会、日本腎臓学会、国際腎臓学会の理事長を務めている。
年1回を目安に尿検査と血液検査を。尿たんぱくやeGFRで引っかかったら診察を受ける
CKDのリスク要因としては、加齢、生活習慣病、腎臓の病気などが挙げられます。
慢性腎臓病(CKD)のリスク要因
●加齢
●糖尿病である
●高血圧である
●脂質異常症である
●肥満である
●喫煙している
●大量飲酒が習慣になっている
●運動不足である
●塩辛いものが大好きである
●自分あるいは近親者が遺伝性の腎臓の病気(多発性嚢胞腎など)である
●近親者に腎臓の病気になったことのある人がいる
●腎移植を受けたことがある
●がんの治療中である
●長年、腎臓に影響する薬を服用している
腎臓のろ過機能を担う糸球体(
前回記事)は壊れると回復せず、数も加齢によって減っていきます。「誰にでもCKDになる可能性があるということです」。
がんやその治療に伴ってCKDになることもあります。「がんが腎臓を傷害する物質を出すことがわかってきました。また、抗がん剤のように腎臓を傷める薬の副作用によってCKDを発症することもあります」。
予防には「糖尿病、高血圧、肥満にならないこと、あるいはきちんとコントロールすること、禁煙が大切です。腎臓で代謝される薬を長く服用している人は定期的に腎機能を調べてください」。大量飲酒を避けることも予防につながります。
検診や健康診断、人間ドックで腎機能を年1回調べる
CKDの診断には尿検査と血液検査が必要です。
尿検査では尿たんぱくを調べます。「陰性(−)」であれば安心ですが、「陰性ではないが明らかに陽性でもない(±)」が2年続いた場合や「陽性(1+以上)」であれば医療機関で診察を受けます。再検査では尿たんぱくの量を正確に測る検査が行われることがあります。「尿たんぱくが多く出ているほど腎機能の低下のスピードが速い傾向がみられます」。
血液検査では血清クレアチニン量の測定が不可欠です。クレアチニンは筋肉で産生され、尿に排せつされる物質で、腎臓での動脈硬化が進むと血液中に増えてきます。血清クレアチニン量に年齢や性別を加味し、1分間にろ過される血液の量である糸球体ろ過量(GFR)を予想する推算糸球体ろ過量(eGFR)が重要で、数値が大きいほど腎機能がよく、90以上が正常です。40歳未満で60未満、40歳以上で45未満であれば医療機関にかかります。
「尿たんぱく、血清クレアチニン、eGFRを調べ、何も指摘されなければ、年1回の検査を継続しましょう。要再検査などの指摘があれば、必ず医療機関で診察を受けてください」。
CKDの治療は進んでいる。腎臓専門医にもかかると安心
CKDの診断基準や主な治療法は次回公開予定です。
近年、SGLT2阻害薬など治療薬の種類が増え、管理栄養士による食事指導といった多職種によるサポートも進んできました。
CKDは、尿たんぱく、GFR値、糖尿病の有無によって重症度が分類されており、「かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準」(日本腎臓学会作成・日本医師会監修)もあります。
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日本腎臓学会 専門医オンライン名簿の検索・閲覧●
かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準(日本腎臓学会作成・日本医師会監修)「進行すると薬の種類が増える傾向があるので、かかりつけ医と腎臓専門医が連携し、定期的に腎臓専門医が診察する2人主治医制になっていると安心です。初期でもかかりつけ医に腎臓専門医にかかりたい旨を話し、腎臓専門医の診察を受けておくのもよいと思います」。
(次回へ続く。)
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