クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第123回 ヨハン・シュトラウス2世 ワルツ『春の声』
イラスト/なめきみほ
新年恒例の華やかな宴にぴったりのワルツ
今日1月1日は、1年の始まりである元日です。クラシック界の新年のスタートは、毎年恒例の超人気イベント「ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート」で幕を開けるといえそうです。
世界で最もチケットが取りにくいとされるこのコンサートの歴史は古く、開催の目的は、ナチス・ドイツのオーストリア併合による民衆の不満を抑えることだったというのには驚きです。第1回は1939年12月31日に行われ、2回目以降は、1月1日の正午に開催されることが恒例となって今に至るようです。
シュトラウス一族のワルツやポルカを中心に行われるこのコンサートの定番が、“ワルツ王”ヨハン・シュトラウス2世(1825~99)のワルツ『春の声』です。この曲は1882年、ヨハン・シュトラウス2世が当時71歳のフランツ・リストと同席したパーティで、余興の即興演奏で披露した曲だといわれています。当時、ヨハン・シュトラウス2世は3度目の結婚を前にした時期で、その幸福感が音楽に反映されているようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。