クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第133回 プロコフィエフ バレエ『ロメオとジュリエット』
イラスト/なめきみほ
プロコフィエフの祖国帰還を飾った名作とは
今日1月11日は、ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフ(1891~1953)のバレエ『ロメオとジュリエット』の旧ソ連における初演日です。(バレエ全曲版の世界初演は1938年チェコスロバキアのブルノ劇場)
ロシア革命を避け、ロシア国外を転々としていたプロコフィエフは1930年代半ばに帰国。以降、旧ソ連の代表的な作曲家として活躍します。シェイクスピアの同名の戯曲を題材としたバレエ『ロメオとジュリエット』が初演されたのは1940年1月11日。ロシアから亡命していたプロコフィエフが、祖国復帰直後に手掛けた作品です。
当時世界最高のバレリーナとうたわれていたガリーナ・ウラノワのジュリエットと、コンスタンチン・セルゲーエフのロメオによって行われたキーロフ劇場(現マリインスキー劇場)でのステージは大成功を収め、プロコフィエフ15年ぶりの祖国帰還に華を添えたのでした。
以後、この作品はバレエのスタンダード・レパートリーとして定着し、音楽もプロコフィエフの代表作としての地位を占めるようになったのです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。