クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第134回 ヤナーチェク『シンフォニエッタ』
イラスト/なめきみほ
小説に登場したことによって大ヒットした名作
今日1月12日は、現代日本を代表する小説家・村上春樹(1949~)の誕生日です。
村上春樹が手がける文章には音楽の登場が定番。特にクラシックとジャズは過去の著作の中でもかなり重要な役割を担っています。この状況にクラシック業界が本気で注目し始めたきっかけが、2009年から2010年に発売された3冊からなる長編小説『1Q84』でした。
物語の中で重要な役割を担って登場する楽曲ヤナーチェク作曲の『シンフォニエッタ』は本の発売と同時に話題となり、CDショップでは売り切れ続出。なにしろ、かなりのクラシックファンでなければ曲名すらも知らないこの『シンフォニエッタ』が、クラシックチャートの上位を占めるほどの人気曲となったことは驚き以外の何物でもありません。
それ以前の作品においては、小説『ねじまき鳥クロニクル』第1部「泥棒かささぎ編」の中に登場したロッシーニのオペラ『泥棒かささぎ』序曲の影響力も絶大でした。主人公が軽快な序曲を口笛で奏でるシーンはとても印象的。まさに村上春樹ワールド全開といった趣です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。