クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第135回 チャイコフスキー バレエ『白鳥の湖』
イラスト/なめきみほ
マシュー・ボーンによってさらに輝きを増す不滅のバレエ
今日1月13日は、イギリスのコンテンポラリーダンス振付家・演出家、マシュー・ボーン(1960~)の誕生日です。
20歳になるまでダンスに全く興味のなかった彼は、ロイヤル・ナショナル・シアターでのアルバイトの際に、出演者を身近に見て刺激を受け、自らもダンサーを目指します。その後ロンドン近郊のトリニティ・ラバンで学んだ後、友人とともにコンテンポラリー舞踊団 「アドヴェンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ」 を設立して、活動を開始します。
その彼の名を一躍有名にしたのが、男性ダンサーを中心にした新解釈の『白鳥の湖』でした。チャイコフスキーの“3大バレエ”の中で、最初に書かれた『白鳥の湖』は、バレエ音楽史上、最も革命的な作品だったといえそうです。
それまでのバレエ音楽は、踊りを美しく見せるためのものであったところが、チャイコフスキーの音楽は、華やかでエレガントであると同時に、不吉な暗さを併せ持っています。そうした音楽の多面性を生かしたマシュー・ボーンの演出は、名作の魅力をよりいっそう高めたようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。