クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第139回 ティールマン・スザート『舞曲集』
イラスト/なめきみほ
金管アンサンブルの開拓者
今日1月17日は、英国のトランペット奏者フィリップ・ジョーンズ(1928~2000)の命日です。
イングランド南西部に位置するサマセット州バースに生まれたジョーンズは、BBC交響楽団をはじめ、ロンドンの主要なオーケストラの首席トランペット奏者を歴任。この間1951年に「フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル」を結成します。トランペット4、ホルン1、トロンボーン4、チューバ1の金管十重奏が奏でる音楽のすばらしさと華やかさは圧倒的。私が吹奏楽部に入ってトランペットを吹いていた時代に体験した彼らの初来日公演(1974年)は、今も忘れられない思い出です。
その彼らのレパートリーの1つ、スザートの『舞曲集』からは、イギリス伝統の金管アンサンブルの魅力があふれ出るようです。英国の「ブラスバンド」といえば、金管楽器のみのアンサンブルが一般的。木管楽器を含めた日本の吹奏楽との違いも興味深いポイントです。そのあたりは1996年公開の映画『ブラス!』にも描かれていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。