クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第140回 セルゲイ・プロコフィエフ『ピアノソナタ第7番』
イラスト/なめきみほ
20世紀屈指のピアノソナタの背景
今日1月18日は、旧ソ連の作曲家セルゲイ・プロコフィエフ(1891~1953)の『ピアノソナタ第7番』の初演日です。
ピアノの名手でもあったプロコフィエフは、その生涯に9曲のピアノソナタを残しています。中でも第二次世界大戦中に作曲された第6番、7番、8番の3曲は、「戦争ソナタ」の愛称で呼ばれる名作です。
最も人気の高い第7番の初演は1943年1月18日モスクワ。旧ソ連最高の名手スヴャトスラフ・リヒテルによって行われています。録音においては、若き日のウラディミール・ホロヴィッツの名演が有名ですが、バッハ演奏で名高いカナダの鬼才グレン・グールドの録音が存在するのも意外です。
録音した理由についてグールドは「自分のほうがホロヴィッツよりうまいことを証明したかった」と語っています。いやはや、大人げなくも楽しすぎるグールドさん。それにしても20世紀を代表する3人のピアニストの名が挙がるあたりに、改めてこの作品の魅力を感じます。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。