クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第147回 フィリップ・グラス 映画『めぐりあう時間たち』
イラスト/なめきみほ
ミニマル・ミュージックの旗手が手がけた極上の映画音楽
今日1月25日は、英国の小説家ヴァージニア・ウルフ(1882~1941)の誕生日です。
ロンドン文学界の重要なメンバーであったウルフは、『ダロウェイ夫人』や『灯台へ』などの小説のほか、「女性が小説を書こうとするなら、お金と自分だけの部屋を持たねばならない」といった主張でも知られる評論家でもありました。
ウルフの代表作『ダロウェイ夫人』をモチーフにした2002年公開の映画『めぐりあう時間たち』は、ウルフを含む、3つの時代に生きる3人の女性の人生を変えた1日の物語です。原作は、マイケル・カニンガムの小説『めぐりあう時間たち 三人のダロウェイ夫人』。そして、この映画のための印象的な音楽を担当したのが、ミニマルミュージックを代表する作曲家フィリップ・グラス(1937~)です。
ちなみに同作は、2022年に新進気鋭の作曲家ケヴィン・プッツ(1972~)によってオペラ化され、METライブビューイングで上映されています。ヴァージニア・ウルフを巡る2つの音楽は、どちらもとても刺激的です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。