クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第148回 エルガー『チェロ協奏曲』
イラスト/なめきみほ
悲劇の天才チェリストがこの世に残した宝物
今日1月26日は、英国のチェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945~87)の誕生日です。
世界に衝撃を与えた16歳でのデビューコンサートを始まりに、着実にキャリアを積み上げたデュ・プレは、その圧倒的な実力によって国際的な名声を得るに至ります。
ダニエル・バレンボイム(指揮者・ピアニスト)との結婚によって栄光の未来が約束されたかに見えた彼女を襲ったのが、不治の病「多発性硬化症」でした。28歳の若さで引退し、42歳でこの世を去ったデュ・プレの悲劇的な生涯は伝説です。
その彼女が得意としていた作品が、同じ英国の作曲家エルガー(1857~1934)の『チェロ協奏曲』でした。第一次世界大戦による心の傷から立ち直ったエルガーが書き上げた『チェロ協奏曲』は、ドヴォルザークのそれと並ぶチェロの人気作。そしてこの曲の魅力を世に知らしめたのが、英国の天才チェリスト、デュ・プレだったのです。
彼女の情熱的な演奏が刻まれたアルバムは、永遠不滅の名盤です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。