クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第149回 モーツァルト『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』
イラスト/なめきみほ
シンプルにして一度聴いたら耳についてはなれない音楽とは
今日1月27日は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~91)の誕生日です。
その才能の凄さは、ミドルネームである“アマデウス(神に愛されしもの)”そのもの。同時代の文豪ゲーテによる「モーツァルトは、デーモンが人間をからかうために生み出した魅惑的な人物だ」という言葉が、その凄さを象徴しているようです。
天才モーツァルトが残した数多くの名作の中でも、『トルコ行進曲』とともに最も親しまれている作品の1つが『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』でしょう。「小さな夜の音楽(小夜曲)」といった意味のこの作品を、モーツァルトが作曲した理由は今もはっきりわかっていません。
オペラ『ドン・ジョヴァンニ』を手がけていた時期に生み出されたこの美しい作品には、2か月ほど前に亡くなった父レオポルトへの思いが込められているのかもしれません。一度聴いたら耳についてはなれないメロディからは、人懐こいモーツァルトの本質が伝わってくるようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。