クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第150回 ショパン『ノクターン第1番作品9-1』
イラスト/なめきみほ
“ピアノの王様”が愛したジェントルなノクターン
今日1月28日は、ポーランド出身のピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982)の誕生日です。
7歳でデビューを飾ったルービンシュタインは、95年の長い生涯をピアノに捧げた、20世紀最大のピアニストの1人です。その性格はおおらかな遊び人。演奏ツアーにはいつも美しい女性秘書を連れていたほか、美食家としても有名で、ミラノの高級料理店などではルービンシュタインのための特別メニューが作られていたといわれます。
まさに“ピアノの王様”といった趣のルービンシュタインが特に愛した作曲家が、同じポーランド出身のショパン(1810~49)でした。中でも「ノクターン(夜想曲)」の端正な美しさは絶品です。ショパンが20歳の頃から晩年に至るまで、ほぼ定期的に書き綴った21曲のノクターンは、さながらショパンの人生を音楽で描いた自画像といった趣の名作です。
今回は、映画『愛情物語』に使われた第2番(作品9-2)に比肩する“ジェントルな第1番(作品9-1)”の美しさをお楽しみください。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。