〔特集〕挑戦し続ける名宿 最上級の温泉宿 コロナ禍という試練を経て、日本の名宿が、原点を見つめ直し、新しい時代の新しい高級旅館の有り様を提示しつつあります。守りに入らず攻め続ける、名宿の覚悟と挑戦から、今後のラグジュアリー温泉宿の潮流を探ります。
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あさば(静岡・修善寺温泉)
部屋数を絞り、より広く快適にリニューアル
リニューアルされたサロンも広々
2022年5月の改築で奥行きが増し、広くなったサロン。コロナ禍においても、気兼ねなくくつろげる空間になった。
老舗旅館の挑戦、8部屋を4部屋に大改造
日本を代表する温泉旅館として、国内外で名高い「あさば」が、コロナ禍を機に大規模なリニューアルを決行。よりいっそう魅力ある宿へと進化しました。
女将の浅羽魅咲(みさ)さんは、「きっかけは、コロナ禍にあってもいらしてくださるお客様に、安心してくつろいでいただきたいとの思いです。同時に、以前から主人と話していた『考えうる限り、最高のもてなしを提供できる宿に』という理想に近づけていきたいとの思いもありました」と話します。
もともと3つの客室があった空間に誕生した新しい客室「羽衣」。テラス付きで、総面積126平方メートル。
寝室と本間の外には、季節の移ろいを五感で満喫できるテラスがある。夜になるとライトアップされた庭の池に山が映り込んで美しい。
「能舞台が望める新しい客室でゆったりとくつろいでいただきたい」 浅羽魅咲さん(あさば女将)
2022年にはパブリックスペースのサロンを、お客様同士が十分な距離を保てる広さにリニューアル。2023年2月には1か月間休業し、客室の半数を改築しました。能舞台に面した8室が、半露天風呂とテラス付きの4つの客室に生まれ変わったことで、全12室が源泉かけ流しのお風呂を備えた2間以上ある客室に。
「能舞台を眺めながら温泉に入れるのは、うちならではのよさですので、ゆったり楽しんでいただけるようにと、もとは一つの部屋だった空間全部をお風呂にしています」。
「あさば」の新しい客室「羽衣」では、朝な夕なに能舞台と池を眺めながら、湯浴みを楽しめる。
半露天風呂を造る際、最大の壁となったのが、「開放感はありながら、プライベートは守られる」という、相反する条件を満たす間取りや塀の角度を見つけること。これならと納得できるまでに、何十回も試行錯誤を重ねたといいます。
そのかいもあり、新しい客室の評判は上々。「次もこの部屋で」といったお客様の声を励みに、535年の歴史を誇る老舗旅館の挑戦と進化は続きます。
日本の伝統芸能に触れる幽玄の夜
あさばの象徴である能舞台「月桂殿」では、折々に、能、狂言、京舞、新内の公演が行われる。
床の間に飾られた銘品にもご注目
テラコッタの作品は韓国の美術家、李禹煥(リ ウファン)の作。書棚には古今東西の芸術関連の本が並ぶ。
現代アートに、名宿の美意識が凝縮
さまざまな現代アートを鑑賞できるのも醍醐味の一つ。写真は宮島達男の作。
旬を味わう料理の主役は駿河湾の幸
さっと油通しして、レアに仕上げた伊勢海老の油霜。焼いた伊勢海老の頭から作るソースとともにいただく。
七輪でじっくり火を通した、さわらの炭火焼き。料理が映える器は共に尾形乾山の作。
あさば住所:静岡県伊豆市修善寺3450-1
TEL:0558(72)7000
基本料金:1室2名利用で1泊2食付き1名8万2650円~ ご紹介した「羽衣」は同19万2650円~(ともにサービス料込み)
全12室 IN14時30分/ OUT11時30分
7歳未満不可(はなれ「天鼓」を除く)
(次回へ続く。
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