クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第154回 R・シュトラウス オペラ『ばらの騎士』
イラスト/なめきみほ
20世紀最高のオペラを生み出した名コンビ
今日2月1日は、ザルツブルク音楽祭の発案者としても知られる、オーストリアの詩人・劇作家ホーフマンスタール(1874~1929)の誕生日です。
世紀末のウィーンにおいて“神童”と呼ばれ、流麗な詩や散文を書いていたホーフマンスタールは、『チャンドス卿の手紙』を転機に舞台作品へと移行。同時代の作曲家R・シュトラウス(1864~1949)との共同作業によって数々のオペラを手がけます。
その最高峰に位置する作品が、1911年に初演された楽劇『ばらの騎士』です。その人気は凄まじく、ウィーンから初演会場ドレスデンまでの観劇客専用列車が用意されたのですからびっくりです。
全編が優雅な音楽に彩られたこの作品の舞台は、マリア・テレジア治世下のウィーン。特に第3幕の三重唱と二重唱の美しさは格別で、遺言によって、シュトラウス自身の葬儀でも三重唱が演奏されています。ちなみに、“当時の貴族たちの習慣で、婚約の申し込みに際して使者が銀のばらの花を花嫁に届ける”という設定は、ホーフマンスタールの創作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。