クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第157回 ドヴォルザーク『弦楽四重奏曲第12番“アメリカ”』
イラスト/なめきみほ
「アメリカ」の名を冠した不滅の名曲とは
今日2月4日は、アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントン(1732~99)が、大統領選挙において選出された日です(1789年)。就任は1789年4月30日。まさに近代アメリカのスタートといえる出来事でした。
その「アメリカ」の名を冠した作品といえば、ドヴォルザーク(1841~1904)の『弦楽四重奏曲第12番“アメリカ”』が有名です。
チェコ国民楽派を代表する作曲家ドヴォルザークは、プラハ音楽院作曲科教授の職にあった1892年6月に、ニューヨーク・ナショナル音楽院からの招きに応じてアメリカへ渡ります。音楽院長としての2年半に及ぶアメリカ生活の中で、黒人霊歌やアメリカ先住民のメロディに刺激を受けたドヴォルザークは、それらの要素を取り入れた名作の数々を残しました。
中でも、哀愁に満ちたな美しいメロディが印象的な『交響曲第9番“新世界より”』と『チェロ協奏曲』、そして『弦楽四重奏曲第12番“アメリカ”』は、ドヴォルザークのアメリカ滞在における最大の成果であると共に、彼の代表作として今も多くのファンに愛されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。