クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第158回 ラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ』
イラスト/なめきみほ
同時代の作曲家から愛された伝説的ピアニストの初演作
今日2月5日は、スペインの伝説的ピアニスト、リカルド・ビニェス(1875~1943)の誕生日です。
同時代の作曲家、ドビュッシー(1862~1918)やラヴェル(1875~1937)作品の初演者として名高いビニェスは、フランスの作曲家プーランク(1899~1963)のピアノの師としても歴史にその名を刻んでいます。上記2人のほかにも、スペインのアルベニスやファリャ、フランスのサティやセブラックなど、同時代の錚々たる作曲家たちが彼に初演を依頼していることからも、ビニェスの際立つ優秀さが想像できます。
ラヴェルの代表作『亡き王女のためのパヴァーヌ』もその1つ。ピアノ曲として誕生したこの名曲の初演は1902年。パリのサル・プレイエルにおいて、当時最高の名手とうたわれたビニェスによって行われています。その8年後に、作曲者自身の手によってオーケストラ用に編曲されたこの曲は、弦楽器のアンサンブルに支えられたホルンがとても美しいメロディを響かせます。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。