クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第167回 モンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』
イラスト/なめきみほ
祈りにも似た静謐な世界の扉を開く
今日2月14日は、スイスの指揮者ミシェル・コルボ(1934~2021)の誕生日です。
1961年に「ローザンヌ声楽アンサンブル」を創設して指揮者に就任。「ローザンヌ器楽アンサンブル」などとともに数々の名演を残したことは、近代音楽史上に刻まれた美しい記録の1つでしょう。
そのコルボの名を一躍有名にした作品が、
フォーレ(1845~1924)の『レクイエム』でした。1888年に完成されたフォーレの代表作『レクイエム』は、作品を彩る透明感と明るさによって、死者のためのミサ曲「レクイエム」の中でも極めて異質な存在とされています。“最後の審判の苦痛や恐怖”を表現するのではなく、“永遠への安らぎ”を描いたことは、フォーレ自身の思想の反映とされています。
同様に、コルボの名声を高めた作品が、イタリア・バロック時代の作曲家、モンテヴェルディ(1567~1643)の声楽曲でした。代表曲として知られる『聖母マリアの夕べの祈り』は、カトリック教会における日課の1つ「夕べの礼拝」が元になった名作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。