クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第169回 マスネ オペラ『ウェルテル』
イラスト/なめきみほ
愛のために人は死ぬことができるのか!?
今日2月16日は、19世紀フランスを代表する作曲家マスネ(1842~1912)のオペラ『ウェルテル』の初演日です。
ゲーテの名作『若きウェルテルの悩み』を題材としたこのオペラは、ゲーテによる“愛のために人は死ねる”という崇高な思想を美しい音楽で表現したロマンチックオペラの傑作です。
その物語は、「美しい娘シャルロットに出会い、ひと目で恋に落ちたウェルテル。しかし彼女にはすでに婚約者がいたのだった。絶望して旅に出たウェルテルは彼女を忘れることができず、ある日、すでに人妻となっていたシャルロットのもとへと戻り、再び彼女に愛の告白をする……」。このシーンで歌われる名高いアリア「ぼくの心は、みんなここにある! ……春風よ、なぜ僕を目覚めさせるのか」は、涙なくしては聴けない美しさです。
果たして、愛のために人は死ねるのだろうか? その答えが音楽に。初演は1892年2月16日、ウィーンにおいてドイツ語で行われ、大成功を収めたと伝えられます。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。